冠省.  昨年は、日本のゾンビ政体の継承者の一人・安倍晋三が消え去り、それを契機として存立基盤であるカルト連合体(靖国カルト - 統一教会カルト- 創価学会カルト)の実態が炙り出された年でした。それぞれのカルトの淵源が100年ほど前であったことも認知会計情報によって確認できました。
 貴兄からカルト連合体と満州人脈にかかる情報を教えていただき、私が多年にわたって認知会計によって抽出した情報と、フェイク(嘘)・不正の括りで有意的に結び付けることができたのは新鮮な驚きであり、喜びでした。これも二年近く続いた貴兄との対話の賜物と感謝しています。

 認知会計情報の中でも私の個人的な情報に関して言えば、平成8年に脱税(冤罪)で逮捕されて社会的に抹殺(Character Assassination)された情報があります。冤罪を創り上げて抹殺犯の片棒を担いだ犯人が他ならぬ中村寿夫弁護士であったことが確認できた年でもありました。抹殺犯(査察・検察)の手引きをしておきながら何食わぬ顔をして弁護人を引き受けたのが中村寿夫弁護士だったのです。典型的なマッチ・ポンプ(注1)です。詳しくは、認知会計発見の端緒となった『冤罪を創る人々』(電子版)をご高覧賜れば幸いです。
 尚、『冤罪を創る人々-国家暴力の現場から』(電子版)は、通常のノンフィクションではありません。会計士の目線から財務会計情報を整理して時系列でまとめた作品で、ほとんど全ての情報を私自身、原資料によって確認した直接証拠であり、伝聞証拠の類はありません。「冤罪を証明する定理(山根定理)」(以下、山根定理)は、この作品のいわばエッセンスであり、帰謬法(背理法)(注4)を基に導き出した命題です。認知会計情報を帰謬法によって整理した命題が山根定理ということです。
 
 中村寿夫弁護士は、このたびのスラップ訴訟(注2)において、

 「山根定理は一般に通用しない独自(一人よがり)の見解で、それを振りかざして依頼者(山陰総業有限会社、以下山陰総業)を騙し、多額の報酬を騙し盗ろうとした」
 
 と言い募り、スラップ訴訟に臨んでいます。第一審では中村寿夫弁護士の詭弁(注3)が功を奏し、中村・山陰総業側の勝訴となっています。
 スラップ訴訟の控訴審は、令和5年1月16日から法廷に移されて審理がなされます。
 控訴審に提出した「控訴理由書」(令和4年11月1日付)を末尾に添付し、公開(パブリック・アナウンスメント)いたします。「控訴理由補充書」は、令和5年1月10日に理由を補充したものです。 


(注1) マッチ・ポンプ。「〔自分でマッチに火を点けておいて、ポンプで消火する意〕自分から揉め事を起したあとで、その収拾を持ち掛けることにより報酬を受け取ったり自分の手柄にしたりすること(人)。-新明解国語辞典」

(注2)
 スラップ訴訟。「(Strategic Lawsuit Against Public Participation) 恫喝訴訟のこと。(訴訟の形態の一つであり、特に金銭さえあれば裁判が容易に起こせる民事訴訟において、誹謗中傷を除いた公共の利益に関わる反社会的言動・行為への真実性又は真実相当性のある批判・発信に対して、自らは裁判結果で赤字となろうとも名誉毀損を主張し、弁護士費用・時間消費・肉体的精神的疲労などを相手に負わせることを目的に起こされる加罰的・報復的訴訟を指す言葉である。-ウィキペディア」
    スラップ訴訟。「(Strategic Lawsuit Against Public Participation) (ある程度の発言力や社会的影響力のある、社会的に優位といえる立場の者が、特に発言力や影響力を持たない相対的弱者を相手取り訴訟を起こすこと。強者が弱者に対して訴訟をしかけることで、半ば社会的な恫喝あるいは報復として機能する。-新語時事用語辞典」

(注3) 詭弁。「きべん。〔詭は、欺く意〕本来つじつまの合わない事を強引に言いくるめようとする議論。-新明解国語辞典」

(注4) 帰謬法(背理法)。「きびゅうほう。〔「謬=誤り」に帰着せしめることによる証明法の意〕〔数学で〕ある命題が真であることを証明する際に、その命題が偽(ギ)であると仮定すれば矛盾が生じることを示すことによる方法。-新明解国語辞典」




令和4年(ネ)第54号、同55号
損害賠償請求等控訴事件、業務報酬請求反訴控訴事件(第2事件)
控訴人 山 根  治
被控訴人 山陰総業(有)外3名

            控訴理由書

                           令和4年11月1日

広島高等裁判所松江支部 御中 F:0852-28-1355


             控訴人
             訴訟代理人弁護士  石  山  貴  明




第1 原判決「第2 事案の概要等」における事実認定の誤り
 1 「2 前提事実」に関して
 ⑴ 判決文6頁4行目「平成30年頃から原告会社の税務に関与」
   原告伊藤は、平成30年には原告会社の税務に関与していない。
 ⑵ 判決文9頁14行目「原告会社の関係者は、」「広島国税局からの犯則事件調
  査のための出頭要請に応じなかった」
   安井女史、有田鉄男、有田百合子らは出頭要請に応じていた。
 ⑶ 判決文11頁11行目以下「廃止後の前記旧ブログの記事を「山根治blog
  アーカイブ」といい、アーカイブとして、運営会社のホームページ上に投稿し
  た」
   新規ブログは、運営会社のホームぺージに投稿するものではなく、フォレス
  ト・コンサルタンツ社のホームページに投稿されたもの。
 2 「4 争点に対する当事者の主張」
 ⑴ 「⑴ 本契約上の義務違反の有無」「(被告治の主張)」「イ」(原判決14頁)
   原判決は、控訴人山根治(以下「山根治」という)の主張として、「イ 山根
  定理は理論的に正当な内容であり、今後の裁判等において通用性を有すること
  となるものである。」と表記する。
   しかし、控訴人は、山根定理について「税法及び刑法的かつ会計学見地から
  十分な合理性を有する見解である」と主張しており(被告準備書面⑸6頁11
  行目)、「理論的に正当」ではなく「法的かつ会計学的に十分な合理性を有する」
  が正しい。
   また、控訴人は、「最高裁判所もその決定において明確な否定の立論を見い出
  していない」ため「通用する筈のない」と言い切れる理論ではないことを主張 
  している(被告準備書面⑸4頁7行目以下)。従って、山根治の主張内容として
  は、「裁判で通用する可能性が認められる」が正しい。
 ⑵ 「⑶ 「原告会社が故意又は重大な過失により委任事務処理を不能にしたと
  き」(本件契約書2条⑥ⅱ)の該当性(争点⑵ア)」「(被告治の主張)」「イ」「(ア)」
  (原判決17頁)     
   原判決は、「山査察官は、同月18日、山根事務所を訪れた」旨の主張を記
  述する。
   しかし、山根治は、「原告伊藤は」「示し合わせたように山持氏が国税OBと
  面談すると伝えた同年1月18日当日も、山根治の事務所を訪問している」(被
  告準備書面⑾3頁3行目以下)と主張しており、山持査察官が同月18日に山
  根事務所を来訪したとの主張はしていない。よって、この「(被告治の主張)」
  の記述は誤りである。
第2 原判決「第3 当裁判所の判断」における事実認定の誤り
 1 「1 認定事実」「⑶ 本件契約締結に至る経緯」「ウ」
 ⑴ 判決文27頁11行目
   原判決は、有田宗一が山根定理の意味内容を理解できなかったことを認定す
  るが、これは來海晶子の供述によるもので有田宗一の認識は不明である。少な
  くとも有田宗一はその後の言動から山根治の主張内容を理解していた。
 ⑵ 判決文27頁21行目以下
   原判決は、山根治との本件契約締結後は「原告会社関係者は、これ以降、本
  件査察の任意調査(質問等)を拒否し、以降質問調書は作成されなかった」旨
  を認定するが、安井女史や有田鉄男らの質問てん末書は作成されており、同記
  述は誤りである。
 2 「2 本件契約関係」「⑴ 争点⑴ア(本件契約上の義務違反の有無)につい
  て
 ⑴ 「ア」判決文42頁10行目以下、原判決における山根治が本件契約に基づ
  いて負担する債務の内容の検討における誤り
 ➀ 原判決は、「原告会社」は「他に依頼できる税理士がいなかったこともあって、」
  「山根治に本件査察調査への対応を委任することとした」と認定する(判決文
  42頁17行目以下)。
   この記述のニュアンスは、他に頼むところがないから消極的な選択で山根治
  に依頼をしたとの來海晶子の説明を盲信したもので、納税者が査察調査に対応
  する実情の理解が欠如している。すなわち、国税局査察部課の犯則調査に対し
  ては、税理士は太刀打ちできず相手にもされず、弁護士も税務が理解できない
  ため役に立たない。その中で査察部課等国税局OB税理士が暗躍し、納税者に
  対して査察部課の言うとおりにしないとひどい結果になるとして脅しをかけて、
  査察部課の見立て通りの結末に納税者を陥れる。これが査察部課の調査の実態
  である。そのため、査察部課の調査活動に対する抑止的活動ができる税理士は、
  山根治しかいないものである。
   來海晶子は、査察部課の調査に対して効果的かつ積極的な防御活動ができる
  税理士の有資格者は山根治しかいないとの認識で、山根治に本件査察調査への
  対応を委任することとしたものであり、決して他にいないからとの消極的な選
  択ではなく、山根治の指摘が正当であると認識していたものである。
 ➁ 原判決は、査察調査対応の依頼を受けた山根治の債務の内容として、次の通
  り捉える。
 ア 「税務に関する職業専門家である税理士として、」「租税に関する法令で定め
  られた範囲内で、原告会社が納付すべき税額を少なくし、原告会社やその関係
  者が法人税法等違反の罪で、告発、起訴され、有罪判決を受けることを回避す
  ることを目的として、広島国税局査察部による本件査察の任意調査への立会い
  や、広島国税局査察や松江税務署との修正申告額ないし課税処分に関する交渉
  を行う、本件契約上の債務があったと解される」
   この原判決の考えは大間違いであり、国税局査察部課の犯則調査が何たるも
  のであるか、課税調査とは明らかに別ものであることなど、国税犯則調査手続
  の基礎の理解ができていない。
 イ 原判決は、まず、査察調査への対応を「租税に関する法令で定められた範囲
  内で、」するべきものと決め付ける。これは、法的に間違いである。査察調査は
  国家行為であり、事実上の強制なども横行するおそれがあることから、調査対
  応においては、憲法や刑法を含めた法律全般に基づいて納税者の正当な権利擁
  護のための活動が要請される。
 ウ 次に、原判決は、査察調査への対応は、「租税に関する法令で定められた範囲
  内で、」「納付すべき税額を少なくし」ようとされるものと解するが、次の理由
  から、これも完全に間違った理解である。査察調査は課税調査ではなく犯則の
  取締、つまり、ほ脱犯の摘発である。査察調査は、納税者に対する刑事責任追
  及を目的とするもので、課税を目的とする調査ではない。原判決は、この国税通
  則法の基本が理解できていない。納税者に刑事責任を追及するという脅しや圧
  力をかける虞があるのが査察調査であり、そのような査察調査の過程で納税者
  が査察部課の見解に従った課税を押し付けられると、国家の徴税意向が暴走す
  るため適正な課税など実現しようがないのである。従って、査察調査において
  課税活動がなされることは法体系において認められる余地はない。原判決が、
  山根治に対して査察調査の対応で「納付すべき税額を少なくし」と試みること
  を義務付けているのは、完全に誤った指摘である。
 エ 原判決は、査察調査への対応において、納付税額の減少と告発回避を目的と
  して「広島国税局査察部による本件査察の任意調査への立会い」「を行う、本件
  契約上の債務があったと解」している。
   これは査察調査実務に対する理解が欠落した現実的に妥当し得ない見解であ
  る。査察官による任意調査である対象者に対する質問調査において、査察調査
  対応税理士が立ち会うことが認められることなどあり得ない。対応税理士が簡
  単に査察部課の任意調査に立ち会わせてもらえるような運用などなされていな
  い。
 オ 原判決は、山根治において査察調査対応で、「広島国税局査察部や松江税務署
  との修正申告額ないし課税処分に関する交渉を行う」「本件契約上の債務があっ
  たと解」しているが、これも失当な見解である。
   まず、国税局査察部課は課税処分を担当するものであってはならないため、
  査察部課に対して修正申告や課税処分の交渉をする法的な根拠は現行税法上に
  存在しない。さらに、ここでの「課税処分」が何を意味するか不明である。税
  務署長の専権である更正や決定(国税通則法24条25条)に関して、査察部
  課を通じて「交渉」ができる制度など存在しないのである。
   加えて、査察調査対応過程で、山根治が松江税務署と交渉をせよとの指摘は、
  査察調査は課税調査とは別個に先行して実施されており、その過程で所轄税務署
  の担当者と交渉しても何らの意味もないし、そもそも査察調査の対応で、課税
  庁と交渉をする必要もない。この指摘も、原判決が、国税局査察部課の犯則調
  査が何たるものであるか、課税調査とは明らかに別ものであることなど、国税
  犯則調査手続の基礎の理解ができていないことを如実に示している。かかる誤
  った前提認識からは、正しい事実認定や法的判断は不可能である。
 ③ 原判決が、控訴人による「広島国税局査察部との修正申告額ないし課税処分
  に関する交渉は無意味」との主張を採用しないことについて(判決文43頁8
  行目乃至26行目)
   原判決は、「査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領
  について(事務運営指針)」(以下「事務運営指針」という)(乙イ16)に基づ
  く査察部課及び課税庁の事務実施ついて、何の法的問題意識もなしに「実務の
  運用である」として適法と判断している。
   これは全くの間違いである。そもそも当該事務運営指針は、国税局内部の資
  料で、その存在や名称は一般には秘匿されて明らかにされていない規定であっ
  たものを、山根治は他事件の査察調査対応事案において国税局担当者を追及し
  て規定の存在を発見して、行政情報公開請求を駆使して入手したところの、査
  察部課の内部資料である。これは適法な「実務の運用」ではなく、査察部課が
  納税者に対してほ脱犯の責任追及手続において刑事処罰の威嚇を加えて納税者
  を圧迫して、査察部課の見立て通りの課税を押し付けている実務の運用である。
  そして、事務運営指針では、査察部課が脱漏所得額及びほ脱税額を決定して、
  それを課税庁に伝えた上で課税庁は査察部課の認定通りの課税判断をすること
  が決められている。この刑事処罰の威嚇で納税者を圧迫して課税を押し付ける
  手続は、適正な課税手続ではなく違法である。
   原判決は、事務運営指針に基づく査察調査の実態が納税者に対する不当な課
  税を生じさせるものであることを全く理解できていないばかりか、国税局が秘
  密裡に定めた違法な内部規定を正当な「実務の運用」であると認めるもので失
  当である。
 ⑵ 「イ」判決文44頁1行目以下、原判決における山根治の債務不履行の検討
  における誤り
 ➀ 原判決は、山根治が「本件査察の任意調査に応じないように指示したこと」
  を債務不履行と認定する1事由として挙げる(判決44頁5行目)。
   「任意調査」との概念で実施される査察部課の質問調査は、実態は関係者を
  密室に閉じ込め数時間に亘って、威圧や脅しや誤導を加えて調査対象者の虚
  偽供述を取得する危険が高い調査であり、それが「任意」の名のもとに弁護人
  依頼権も認められず、施錠された密室で、退出の自由も事実上奪う形で連日長
  時間に亘り実施されている。査察事件対応業務においては、このような問題の
  ある任意調査に応じない旨を助言することは合理的である。原判決は、査察部
  課の質問調査の危険性を理解していない点で失当である。
   山根治が査察部課の質問調査に応じないように助言をしたことは、査察調査
  対応の専門家として合理的な理由のある活動であり、債務不履行として考慮さ
  れる事由ではない。
 ➁ 原判決は、山根治が「自らの判断で修正申告額等(ないしこれに影響するほ
  脱額)に関する広島国税局査察部との交渉等は一切行わず」にいたことを、債
  務不履行と認定する1事由として挙げる(判決44頁11行目)。
   前記と同じく、この見解は、査察調査における課税活動が違法であることを
  見過ごすものであり、国税犯則調査手続の基礎の理解ができていないもので失
  当である。 
   査察調査の最前線で納税者の権利を擁護する活動をしたものでなければ、ブ
  ラックボックスにおいてフリーハンドでなされる査察調査の実態や問題性を理
  解ができないものである。原審の裁判体は、国税局査察部課の犯則調査が何た
  るものであるか、課税調査とは明らかに別ものであることなど、国税犯則調査
  手続の基礎の理解ができていない。
 ③ 原判決が最高裁平成14年10月15日同第二小法廷判決を引用して、「国税
  通則法制定後も、法人税法違反(ほ脱犯)の既遂時期は法定納期限の経過時で
  あり」と解することについて(判決文45頁10行目以下)
   これは、いわゆる山根定理との関係では、現在の日本の裁判所の検討レベル
  が不十分であることを示しており、本来先例としての妥当性を喪失している過
  去の判例につき理由も示さずに判決フレーズを使い回すもので失当である。
   前記最高裁平成14年判例は、最高裁第1小法廷昭和36年7月6日(刑集
  15巻7号1054頁)を先例とするものであることは自明である。そこで、
  同判例に先例性が認められないにも関わらず、各裁判所で先例として示してい
  ることにつき項を改めて主張する。

第3 山根定理の根幹(原判決が山根治に債務不履行と認定したことは事実誤認で
  あること)
 1 最高裁第1小法廷昭和36年7月6日判決
   ほ脱犯における「税を免れた」租税債権に対する侵害結果は、納付期限まで
  に租税債務の正当な履行をしないときに発生することになり、虚偽過少申告ほ
  脱犯は、納付期限の経過とともに成立すると解されており、その根拠として最
  高裁昭和36年7月6日第1小法廷判決(以下「36年判決」という)が指摘
  される。
 ⑴ 最高裁判決要旨
   36年判決は、判決要旨として「法人税法第48条第1項の逋脱罪成立後に
  修正申告をしてこれによる増加税額を納付しても逋脱罪の成立を妨げない」と 
  判示している。
 ⑵ 第1審判示内容
   同事件の第1審判決では、次の通り判示する。
  「申告納税制度をとっている現在の法人税法の下においては納税義務者が法人
  税法等の目的をもって虚偽過少の確定申告をなし右虚偽申告の後さらに正当な
  税額を納付しないで所定の納期限を経過すればここに逋脱罪は既遂に達するも
  のと解すべく、すなわち「法人税法第48条にいう申告をなすべき法人税を免れ」
  とは納税義務を消滅させることの意味ではなく、法人税法の要求するところは
  その納期に正当な税額が納付されることに鑑みれば、その納期においてあるい
  はその税額の点において法の要求するところが正しく実現されなかったとき、
  ここに政府からすれば法人税収の減少の事実、納税義務者からすれば法人税を
  免れた事実の発生があったものと解するのが相当であり」とする。
 ⑶ 控訴審判示内容
   次に、控訴審判決でも、「現行法人税法は旧法人税法の賦課納税制度を廃止し
  申告納税制度を採用し確定申告書の提出により申告書に記載された法人税額は
  自動的に確定し、確定した以上政府は法定の納期内に該法人税の収納を成すの
  であるから、もし納期内に法人税の収納がない時は政府は収納の減少をきたし
  納税義務者より見れば法人税を免れる結果となるから法人税法第48条第一項
  のほ脱犯は納期の経過により既遂となるものと解する」と判示している。
 2 36年判決の整理
   最高裁判決では、ほ脱罪成立後に修正申告で増加税額を納付してもほ脱罪は
  成立する旨を述べ、第1審は「申告の後さらに正当な税額を納付しないで所定
  の納期限を経過すればここに逋脱罪は既遂に達する」とし、また、控訴審は「ほ
  脱犯は納期の経過により既遂となるもの」としている。
   ここで、判例は、正当な税額を納付していない場合「所定の納期限」または
  「納期の経過」でほ脱犯は既遂になるものと理解しており、その後、今日まで
  この考え方は維持されていると捉えられており、原審裁判体の判断も同一線上
  にある。
   しかし、上記36年判決は、同判決事案当時の税法の規定に基づいた解釈で
  あり、同判決の翌年に国税通則法が制定され、同法との制度的整合性を確保す
  るために法人税法等の各税法の規定が改正されており、ほ脱犯の既遂時期に関
  する同判例の妥当性を、税額の確定時期との関係で改めて検討する必要がある。
  現在の裁判官は司法権の中枢にあり人権擁護の役割を担っているにも関わらず、
  この点の検証をせず、又は、指摘を受けても無視して36年判決を前提として
  判決作成している。
 3 36年判決事案の税法と現在の税法規定に差異があること
   まず、36年判決の第1審の東京地裁は昭和34年10月10日の判決であ
  り、課税対象事業年度は昭和31年3月期及び昭和32年3月期である。
   従って、36年判決事案については、国税通則法は未制定で適用される余地
  はなく、法律上税額の確定時期に関する規定は存在していなかった。
   さらに、法人税法第48条3項においては逋脱犯が成立した場合政府は直ち
  にその免れた法人税額を徴収することができる旨の制度とされていた(後記に
  資料「法人税法ほ脱犯規定の改正経緯」参照)。
   すなわち、本事案においては、ほ脱犯規定の内容から法人税法に対して賦課
  課税方式が採用されていたと評価できる。この賦課課税方式の下で、法定の納
  期限において納付すべき税額が確定すると考えることが可能であったものであ
  る。
   その後、昭和37年に国税通則法が制定され、同法との整合性を確保するた
  め、昭和40年法人税法改正で、法人税法のほ脱犯の規定につき、ほ脱犯の成
  立で政府が直ちに税を徴収できる旨の規定は廃止された。これは、法人税にお
  いて申告納税方式を貫徹した制度が完成し、法定の納期限で申告にかからない
  税額が確定するという事態は生じ得ないことになったからである。
   この昭和40年改正時に、当時の法人税法では、国税通則法に基づいて、申
  告によって申告された税額が確定し、又は、更正若しくは決定によってその対
  象とされた税額が確定するため、法定の納期限で申告対象とされていない税額
  が確定しないものとなった。
   また、法人税法のほ脱犯の規定も、ほ脱犯が成立する場合に直ちに徴収を認
  める内容にはなってはいないため、国税通則法に則った更正等の手続がない限
  り、税額が確定することは当然ない。
   すなわち、36年判決対象事案では、現在とは異なるほ脱犯規定の内容が定
  められており、また、国税通則法による税額確定時期が明定されていない状況
  において、「所定の納期限」または「納期の経過」で税額が確定すると解するこ
  とが許容されたものである。
   そのため、国税通則法が適用され、かつ、ほ脱犯の刑事裁判の判決に基づい
  て税を徴収できる制度が存在しない現状で妥当する余地のない論理である。
 4 第1審判決の論拠とした条文上の文言は削除されていること
   第1審判決では、「法人税法の要求するところは、その納期に、正当な税額が
  納付されることに鑑みれば」との表現がなされている。これは、当時の法人税
  法で、前述の逋脱犯規定の中に、逋脱犯が成立すれば申告がなくとも、具体的
  に納付すべき法人税額が確定しそれを政府が徴収できるとの規定があったこと
  に基づくもので、法人税法が納期に具体的な金額が定められた法人税を納付す
  ることを要求するとするもので、明らかに申告納税方式には合致しない考え方
  である。
   従って、現在の税法では、国税通則法が定める申告納税方式の貫徹に明らか
  に矛盾し、同様の考えは採り得ないものである。
   加えて、この第1審に適用されたほ脱犯規定では、「申告をなすべき」という
  文言が規定されていた。しかし、同文言は、法人税法の昭和40年3月31日
  全部改正において削除されており、同判決が述べる「法人税法の要求するとこ
  ろは、その納期に、正当な税額が納付されること」の根拠となる条文上の文言
  は現在では存在していない。
 5 小結
   36年判決事案に適用された法人税法では、裁判所が課税標準の決定権限及
  び税額の確定権限を有していた。そのため、裁判所がほ脱犯の成否を判断する
  場合に、法定の申告期限における課税標準及び税額を認定することができ、ま
  た、税額確定時期についても法律上の定めがなく、ほ脱犯の既遂時期を「所定
  の納期限」または「納期の経過」と解することが許容されたものである。
   そして、このほ脱犯の刑事裁判において裁判所が課税行政権を行使する制度
  は、昭和39年以降の税法改正の過程で、税法改正に関する国会の委員会での
  審議でも全く議論の対象とされないまま、密かに政府によって条文自体が消失
  させられたものである。
   従って、これらの昭和39年の税法改正以降では、36年判決の考え方は、
  法制度上根拠を欠いた状態であり、本件において36年判決のほ脱犯の既遂時
  期に関する考え方が妥当する余地はない。
   現行の税法制度では、国税通則法の規定から当然に、税務署長の適法な更正・
  決定が存在する場合にのみ、ほ脱税額についての税額の確定が認められること
  になるものである。
   未だ原判決が引用している前記最高裁平成14年判例が、現状の法制度にお
  いても妥当するとの見解を採る場合には、「第3 山根定理の根幹」における控
  訴人の主張を論理的に否定できる理由を示して頂きたい。
 6 (資料)法人税法ほ脱犯規定の改正経緯
   (昭和22年3月31日~昭和40年3月31日制定法令)
   昭和20年から同40年までの各税法のほ脱犯規定に関する法改正の経緯
 ⑴ 昭和22年3月31日(全部改正)
   第48条
   詐偽その他不正の行為により法人税を免れた場合においては、法人の代表者、
  代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを一年以下
  の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料することが
  できる。
   前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができ
  る。
   第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税標準を決定し、その税
  金を徴収する。 
 ⑵ 昭和25年3月31日(一部改正)
   第四十八条を次のように改める。
   第四十八条 詐偽その他不正の行為により、第十八条第一項、第二十一条第
  一項若しくは第二十二条第一項の規定により申告をなすべき法人税を免れ又は
  第二十六条の三第四項の規定による金額の還付を受けた場合においては、法人
  の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これ
  を三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
   前項の免れた法人税額又は還付を受けた金額が五百万円をこえるときは、情
  状に因り、同項の罰金は五百万円をこえ、その免れた法人税額又は還付を受け
  た金額に相当する金額以下となすことができる。
   第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた法人税額又は還付を
  受けた金額(第二十六条の三第六項の規定により加算された金額のうち当該金
  額に対応する部分の金額を含む。)に相当する税額の法人税を徴収する。
 ⑶ 昭和26年11月30日(一部改正)
   第四十八条第一項及び第三項中「第二十六条の三」を「第二十六条の四に改
  める。
 ⑷ 昭和40年3月31日(全部改正)
   第百五十九条
   偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告に係る法
  人税額) (第百四十五条第一項(外国法人に対する準用)において準用する場合
  を含む。)、第八十九条第二号 (退職年金積立金確定申告に係る法人税額)、第百
  四条第一項第二号(清算確定申告に係る法人税額)若しくは第百十六条第一項
  第二号(合併確定申告に係る法人税額)に規定する法人税の額につき法人税を
  免れ、又は第八十一条第六項 (欠損金の繰戻しによる還付)  (第百四十五条第一
  項において準用する場合を含む。 ) の規定による法人税の還付を受けた場合には、
  法人の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。以下この編において同じ。)、
  代理人、使用人その他の従業者でその違法行為をした者は、三年以下の懲役若
  しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 2 前項の免れた法人税の額又は同項の還付を受けた法人税の額が五百万円をこ
  えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円をこえその免れた法人税の
  額又は還付を受けた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。
 (旧48条3項に相当する条項の規定消失。当職注記)

第4 「2 本件契約関係」「⑵ 争点⑴イ(債務不履行と相当因果関係ある損害の
  発生と額)」について
   本書面「第2」及び「第3」で主張した通り、山根治に債務不履行を認定し
  た原判決には事実誤認があり、債務不履行は認められないため被控訴人山陰総
  業有限会社に相当因果関係のある損害はない。

第5 「2 本件契約関係」「⑵ 争点⑵ア(「原告会社が故意又は重大な過失によ
  り委任事務処理を不能にしたとき」(本件契約書2条⑥ⅱ)の該当性)について
  (判決書47頁25行目以下)について
 1 原判決は、事実を総合しても「原告会社が、平成30年8月頃までに、被告
  治に秘して原告伊藤に本件査察対象年度の修正申告に係る業務を依頼したり、
  同人を通じて広島国税局査察部と交渉をして、刑事事件では有罪とはなるもの
  の誤った修正申告を見逃してもらって多額の利益を得ることに了承したりした
  事実を認めるに足りず」と判断している(判決書49頁4行目以下)。
 2 商工中金における智証言、乙イ52号証3枚目を考慮していないこと
   原判決は、「平成30年8月頃までに、被告治に秘して原告伊藤に本件査察対
  象年度の修正申告に係る業務を依頼した」「事実を認めるに足りず」とする。
   しかし、乙イ52号証3枚目には、「過去7年にさかのぼり、決算を再検討中。」
  「会計事務所(宮本会計事務所/伊藤税理士(国税出身)」との発言をした旨の
  記載があり、それを來海智氏以外が代って伝達したとしても、智氏の意向に基
  づく説明であると認められる。なぜなら、智氏は山陰総業の代表者であり、作
  成者である金融機関担当者は山陰総業の意向として議事録を作成したものだか
  らである。さらに、來海智氏は、山陰総業に不利益とならないように意図的に
  覚えていない旨の発言で誤魔化している(智証言1頁乃至2頁)。
   従って、智証言、乙イ52号証3枚目から、平成30年8月には山陰総業は
  伊藤税理士に対し査察調査対象期間の修正申告を含めて査察調査対応を依頼し
  ていたものと認められる。
 3 原判決は、伊藤税理士を通じて「広島国税局と交渉をして、有罪とはなるも
  のの誤った修正申告を見逃してもらって多額の利益を得ることに了承した事実
  を認めるに足りず」と判断する。
   この判断は、山根治による準備書面⑾「第1」「3 修正申告における違法処
  理が税務署長から見逃されていること」、「4 税務署長による青色申告承認の
  取消し処分においても、山陰総業が課税上不当に有利に取り扱われていること」、
  「5 査察調査に引き続く課税調査の実態では、査察部が課税内容を決定して
  いること」、「6 国税当局査察部は、山陰総業に対する法人税法違反事件の起
  訴時において、山陰総業の本件脱漏所得に対する課税を不当に見逃すことを容
  認していたこと」 (同準備書面4頁乃至11頁)の詳細かつ証拠に基づく具体的
  な主張を正しく考慮しておらず失当である。
   本件のような違法かつ異例の利益がほ脱犯である山陰総業に与えられている
  のは、税務専門家か査察部課と折衝したことによるもので、本件の状況を素直
  に見れば伊藤税理士が暗躍した以外に方法は存在しない。
   山陰総業は、不当に課税を免れることができることで2億円近い税額減少の
  利益を受けるため、裁判上通用しないことが明らかな無罪理由を形式的に主張
  しつつ有罪となり、その有罪の責任を山根治に濡れ衣を着せることに協力した
  ものと合理的に推認できる。
 4 従って、山陰総業は、平成30年8月頃から山根治を排除して、伊藤税理士
  を通じて本件各修正申告をすることを画策し、平成31年4月12日に本件各
  修正申告をして、これによって、山根治における本件委任契約における事務処
  理を故意又は重過失によって不能としたものと認められる。

第6 「3 名誉棄損関係」「⑵ 争点⑶イ(真実性・相当性の抗弁)について」に
  ついて
 1 原判決の認定
   
原判決は、原告会社には「私怨を晴らすため積極的な加害意図をもって」(判
  決文61頁25行目)、原告來海には「私怨を晴らすため積極的な加害・報復の
  意図をもって」(判決文62頁22行目)、原告伊藤には「同人に対する私怨を
  晴らすため積極的な加害目的の下」(判決文63頁16行目)、及び原告中村に
  は
「私怨を晴らすため積極的な加害意図をもって(判決文64頁10行目)、
  それぞれ表現行為に及んだものと認定し、「専ら公益を図る目的で行われたもの
  とはいえない」とする。
 2 山根治の本件表現行為の目的
   山根治は、山陰総業有限会社の法人税法違反被告事件(以下「本件ほ脱事件」
  という)に関連して、山根blogや関係者打合せでの本件各表現行為をしたもの
  である。
   本件ほ脱事件は、山陰総業が5億円あまりの使途不明金を支出しているにも
  関わらず、単なる横領として揉み消そうしたもので、「組織的な犯罪の処罰及び
  犯罪収益の規制等に関する法律(以下、組暴法という)に規定される犯罪収益
  隠匿、犯罪収益仮装に抵触する蓋然性がある。
   山根治は、この犯罪該当事実を明らかにする意図で、同事件関係者らの不正
  な活動に関する事実を公表したもので、犯罪に関連性を有する事情の摘示とし
  て専ら公然を図る目的で行われたものである。よって、この点の原判決の認定
  は事実誤認である。
   なお、原審山根治準備書面⑾で主張した通り、本件各ブログ記事の真実性、
  及び、原告來海に関する発言内容の真実性は証明されている。

第7 結語
   原判決は誤った認定に基づくものであるから、取り消されるべきである。


                                     以上




令和4年(ネ)第54号、同55号
損害賠償請求等控訴事件、業務報酬請求反訴控訴事件
控訴人 山 根  治
被控訴人 山陰総業(有)外3名

                                    控訴理由補充書

                                                                               令和5年1月10日

広島高等裁判所松江支部 御中 F:0852-28-1355


             控訴人
             訴訟代理人弁護士  石  山  貴  明



 頭書事件における令和4年11月1日付控訴理由書について、次の通り理由を補
充する。

第1 令和4年11月1日付、控訴理由書(P16)「1 原判決の認定」の中に
  補充する。
1 原判決の認定
  原判決は、原告会社には「私怨を晴らすため積極的な加害意図をもって」(判
 決文61頁25行目)、原告來海には「私怨を晴らすため積極的な加害・報復の
 意図をもって」 (判決文62頁22行目)、原告伊藤には「同人に対する私怨を晴
 らすため積極的な加害目的の下」(判決文63頁16行目)、及び原告中村には「
 を晴らすため積極的な加害意図をもって」(判決文64頁10行目)、それぞれ表
 現行為に及んだものと認定し、「専ら公益を図る目的で行われたものとはいえない」
 とする。
  原判決は、山根治が原告4名(以下、原告という)に対して私怨を有していた
 ことを前提として、私怨を晴らすために表現行為に及んだものと認定している。
 しかし、この認定は誤りである。
  山根治が原告中村寿夫をはじめその他の原告らに対して抱いていたのは私怨
 ではなく、公憤である。

  公憤の実際は、以下の通りである。

  山陰総業脱税事件と益田市畜産脱税事件において、犯罪事実のスリカエが行わ
 れている。それぞれ、横領犯からほ脱犯へ、詐欺犯からほ脱犯へのスリカエであ
 る。
  原告中村寿夫は、犯罪事実のスリカエを行うことによって、山根治に濡れ衣を
 着せ、架空の犯罪スト-リ-を創ることに積極的に協力し、無実の罪をデッチ上
 げた張本人である。
  国税当局が、本来全く異なった税務調査手続である課税調査手続と査察調査手
 続を意図的に同一視し、査察官による修正申告の  “ 慫慂 ” や “ 予納 ” を合法であ
 るかの如く仮装し、昭和37年に制定された国税通則法第15条、16条、19
 条、24条、25条、28条の「税額の確定」規定を等閑視し、犯罪事実の存在
 しない脱税事件を創り上げているのに便乗して、原告中村寿夫は冤罪事件を創り
 だすのに協力して、山根治を二度にわたって社会的に抹殺した。

                                   以上


公憤。「こうふん。社会の悪に対して、一個人としての利害を超えて感じる怒り。↔ 私憤。-新明解国語辞典」

私怨。「しえん。個人的なうらみ。-新明解国語辞典」